今回ご紹介するのは映画『Pearl パール』です。映画『X エックス』に登場した狂気の連続殺人鬼パールが、いかにして誕生したのかが描かれる!!
映画『Pearl パール』の作品情報
作品情報
作品名 | Pearl パール |
原題 | Pearl |
監督 | タイ・ウェスト |
脚本 | タイ・ウェスト ミア・ゴス |
出演 | ミア・ゴス デビッド・コレンスウェット タンディ・ライト マシュー・サンダーランド エマ・ジェンキンス=プーロ |
製作国 | アメリカ |
公開日時 | 2023年7月7日 |
上映時間 | 102分 |
映画『Pearl パール』の登場人物とキャスト
写真 | 役名・キャスト・概要 |
---|---|
パール (ミア・ゴス) 世界一のスターを夢見る女性。若くして結婚した夫のハワードが戦争に出征したことによって実家に1人取り残され両親と共に農場を営んでいる。 | |
映写技師 (デビッド・コレンスウェット) パールが街に薬を買いに行った際にこっそりと立ち寄った映画館で働く青年。 | |
ルース (タンディ・ライト) パールの母親。ドイツからの移民。生真面目な性格でパールのことを管理下に置こうとしている。 | |
パールの父 (マシュー・サンダーランド) 病気の影響で体を動かすことができないため、車椅子で家族の助けを受けながら生活している。 | |
ハワード (アリステア・シーウェル) パールの夫。彼女を置いて出征している。 | |
ミッツィー (エマ・ジェンキンス=プーロ) パールの義理の妹。ハワードの実妹。 |
映画『Pearl パール』のあらすじ
スクリーンスターに憧れるパール
1918年、テキサス州の 農場で暮らすパールは、スクリーンに映るスターに強く憧れ、いつか農場を離れて自分もスターになることを夢見ていた。
しかし、若くして結婚したパールの夫ハワードは戦争に出征しており、パールは体の不自由な父親と信仰心の強い厳格な母親ルースと共に農場で働く生活を送っていた。
ルースはパールの夢を「くだらない考えだ」と厳しく非難し、男性の手が足りず生活が苦しいため、もっと農場を手伝うように命じていた。
戦時中、ドイツ系移民であるパールの家族は肩身が狭い思いをしており、町ではスペイン風邪が流行していたのだ。
それでも夢を捨てきれないパールは、農場の家畜を観客に見立てて1人でミュージカルショーを披露していた。
前作の映画『X エックス』を復習したい方はこちら↓
街に薬を買いに行くパール
ある日、パールは父親の薬を買うために町に出かける。
薬を購入した後、残ったお金でルースには内緒で映画を見に行った。
映画の中で踊るダンサーたちに、パールは目を奪われる。
映画館を出たパールは、映写技師と出会うと、スターになりたいという夢を語った。
すると、映写技師は「君は可愛いからきっとなれるよ。スクリーンで君が踊るのを楽しみにしている」と言った。
親を見捨てて農場を離れることはできないと話すパールに、映写技師は「自分の好きなように自由に生きるべきだ」と励まし、「好きな映画を見せてあげるから、町に来たときはこの部屋をノックして」と言ったのだった。
映写技師と出会ったことで、パールはますます農場を出たいという思いが強くなっていた。
そして、パールは農場のカカシを相手に恍惚とした表情でダンスを始める。
すると、カカシの顔が一瞬、映写技師に見え、はっとしたパールは「私は人妻よ!」と叫んだのだった。
しかし、何かに刺激をされたパールは突然、カカシにまたがり性行為の真似を始めたのだった。
この先は物語の結末やネタバレを含みますので閲覧には充分ご注意ください!!
母親ルースとの生活に限界を感じるパール
農場に戻ると、ルースに薬代の残りのお金はどうしたのかと問い詰められたパールは、咄嗟に「帰りにキャンディを買って食べた」と答えた。
しかし、ルースはパールの夕食を取り上げ、「お菓子を食べたなら食事はいらないわね」と言い放った。
パールは厳格な母親ルースとの生活に限界を感じていた。
ある時、パールの農場を尋ねてきた義妹ミッツィーから今度教会でダンスオーディションがあると知らされる。
パールはどうしても農場を抜け出したいという思いから、そのオーディションに対する気持ちが高まっていた。
ヨーロッパ行きへの希望を膨らませるパール
オーディションを前にして気持ちが高ぶるパールは、夜に家を抜け出して映写技師の元へ向かった。
映写技師はパールにまだ誰も見たことのない映画を見せると言い、従軍中にフランスで手に入れたポルノ映画を見せる。
当時のアメリカにはまだポルノ映画が入っていなかったため、初めて見るパールは「これは合法なの?」と驚きながらも映画に見入っていた。
映写技師は「いつかこのような映画が普及するだろう」と言い、パールにこの種の映画に出演することを勧めるようなことを口にしていた。
映写技師の話を聞いたパールは、農場を抜け出して自由なヨーロッパへ行きたいと思いがさらに強まったのだった。
パールの本性がついに現れる
ルースはパールの行動を快く思っていなかった。
パールがオーディションを受けると伝えると、ルースは「そんなことは無駄だ。お前は一生農場から出られない」と言い放った。
するとパールは私の才能を知らないだろと反論するが、ルースは「お前のしていることは全部お見通しで本性は隠せない」と言ったのだ。
ルースはパールに対して「オーディションを受ければいい。ただ、その結果を知った時の気持ちを忘れるな。それは私がお前を見るときに感じる気持ちだから」と話を続けたのだ。
その後、二人は激しい口論となり、取っ組み合いの喧嘩に発展する。
パールはルースを暖炉の方に押し付けると、ルースのスカートに火が移り、彼女は火だるまになる。
パールは驚きで立ち尽くすが、我に返って近くにあったスープをルースにかけて火を消した。
しかし、ルースは焼け焦げて立つこともできない。
身動きできない父親は、恐怖に震えながら目を見開いていたのだった。
映写技師の元に向かうパール
パールはそんな両親を置き去りにし、雨の中を映写技師の元へ向かう。
ドアをノックすると、映写技師とそのままキスをし、二人はベッドに入る。
朝、映写技師はパールを家まで送って行った。
家に着くとパールは慌てた様子で映写技師を戸口に待たせて家の中に入る。
パールはルースを床でのたうち回る姿のまま地下室に閉じ込め、父親を部屋に戻した後、何事もなかったかのように映写技師を家に案内した。
しかし、映写技師は異変を感じ取り、パールに対する恐怖が態度に現れてしまう。
パールは父親に映写技師を紹介し、納屋に連れて行って家畜の紹介を始めた。
映写技師は帰るべきだと言いますが、パールの表情が次第に豹変していくのに気づく。
「どうしてそんな態度が変わったの?」と尋ねるパールに、映写技師は最初は何でもないと答えるが、パールが何度も問い詰めるので、「君が怖いからだ」と本音を告げてしまった。
「ヨーロッパに行くと言ったのも嘘だったのね」と怒鳴るパールに、映写技師は帰ろうとしますが、パールは農具を突き立てて「誰も私の邪魔はできない」と叫び、映写技師を殺してしまった。
そしてパールは映写技師を車ごと湖に突き落とし、ワニの餌にしてしまう。
ルースを地下室に閉じ込めた後、怯えた父親の視線を受け止め、父親も楽にしてあげようと殺してしまった。
最後に身支度を整えて真っ赤なドレスで教会のオーディションに向かったのだった。
オーディションに臨むパール
ミッツィーはオーディション会場でパールの荷物を見て、どうしたのかと尋ねるとヨーロッパ巡業に必要な荷物を持ってきたと説明するパール。
オーディションに勝つのは私だとパールは自信に満ち溢れていたのだ。
パールは全力を尽くしてオーディションに臨んだものの、あっさりと「求めているのはもっとアメリカ的なブロンドの少女だ」と言われ、パールは絶望する。
泣き叫ぶパールのもとにミッツィーが大丈夫?と尋ね、家まで送ってくれた。
ミッツィーに胸の内を打ち明けるパール
ミッツィーは何とかパールを励まそうとする。
お茶をしながら、日頃の不満を抱えていたパールに対して、ミッツィーが「私をハワードだと思って思いをぶつけてみて」と言うと、パールは話し始めた。
「良い家で育てられた完璧なハワードに好かれたのが嬉しかった。この人なら私を農場から連れ出してくれると思ったのに、ハワードは農場の暮らしがいいと言い、今度は戦争に行ってしまった」と不満を漏らしたパール。
パールは涙を浮かべながら、「私を置き去りにして…死ねばいいのに」と語り始めると、義妹は戸惑いの表情を浮かべる。
更に「他の男に目移りしたこともある」とパールは告白した。
パールはどんどんこれまでに犯した過ちを告白し始めた。
「最初は小さな動物だった。何も思わなかったけれど、ママやパパ、映写技師は違っていた。快感を覚えたんだ」と語るパールに対してミッツィーは次第に恐怖を感じ、話を遮って帰ろうとするも、パールは止まらなかった。
やっと話し終わったパールはミッツィーに向かって「誰にも言わないでくれる?」と尋ねる。
ミッツィーはパールを刺激しないように笑顔を保ちながら、「誰にも言わない」と約束したのだった。
義妹に手を出すパール
そして、帰ろうとするミッツィーにパールは突然、「おめでとう。隠さなくていい。オーディション受かったんでしょう?」と言った。
ミッツィーは嘘をつかず、ぎこちなくオーディションに合格したことを認め、家を出て帰ろうとする。
すると、パールは家を出て斧を手に取り、ミッツィーを追いかけると彼女は叫びながら逃げ出した。しかし、恐怖でつまづいてしまい、パールに斧で切りつけられる。
ミッツィーは「何でもあげるから許して」と懇願しますが、パールは「もう人のことを羨むのをやめたの、私の持っているものを大事にする」といつかルースに言われた言葉を口にしたのだった。
ミッツィーを殺した後、パールは生き絶えた両親をテーブルに座らせ、腐った豚などをテーブルに並べ家族団欒の時間を始めようとしていた。
そんな時に突然、出征中だったハワードが戦争から帰ってくる。
異常な光景を見たハワードは愕然とした表情を浮かべていたが、パールは必死に笑顔を作りハワードを迎えたのだった。
映画『Pearl パール』の考察
パールが可愛がっていたワニの名前の由来は?
映画『X エックス』シリーズに登場し、パールの長年の相棒である映画の象徴的存在のワニの名前はセダである。
この名前は、サイレント映画時代の著名な女優であり、最初のセックス・シンボルと称されたセダ・バラに由来している。
パールが父の薬を買いに行った街で目にした映画館のポスターには、主演女優としてセダ・バラの名前が載っていた。
セダ・バラは、13年間で44本の映画に出演し、その中でも特に人気を博しましたが、サウンド・フィルムには出演することなく、1926年に女優業を引退している。
さらに、彼女の出演作の多くは1937年の火災で焼失し、現在残っている作品は非常に少ないのだ。
スペイン風邪が流行している時代の設定はコロナ禍と関係あるの?
スペイン風邪とコロナの時代背景が似ていると感じた方も多いのではないだろうか?
スペイン風邪は、1920年までに世界で5億人が感染したと言われている。
この時代設定が『Pearl パール』に採用されたのは、タイ・ウェスト監督とミア・ゴスがコロナ禍の隔離期間中に脚本を書き上げたことに大きく関係している。
監督自身も、この2つのパンデミックの共通点を意識していたと語っているのだ。
映画『Pearl パール』に他作品のオマージュは出てくるの?
映画『Pearl パール』には、オマージュされたと考えられる作品が2つある。
それは、『オズの魔法使』と『何がジェーンに起ったか?』である。
1つ目に『オズの魔法使』と共通する要素が多く、例えば、鮮やかな色彩(テクニカラー)を使用した制作やカカシが登場する点、主人公の人物像である。
偶然にも映画の上映時間も同じである為、オマージュなのではと囁かれている。
実際に、監督のタイ・ウェストも、主演のミア・ゴスに映画の雰囲気を掴むために『オズの魔法使』を観ることを薦めたと語っている。
そのことから、パールがドレスを着て自転車で走るシーンは、『オズの魔法使』のミス・ガルチへのオマージュで間違い無いと言えるだろう。
2つ目の作品は、1962年公開のサイコスリラー『何がジェーンに起ったか?』である。
この映画では、女優として成功を夢見る女性が次第に正気を失っていく様子が描かれており、この点で『Pearl パール』と内容が近しいことからインスピレーションを受けているのではないかと言える。
映画『Pearl パール』の感想
この作品はA24初のシリーズ作品で、世界中に衝撃を与えたホラー映画『X エックス』に登場したシリアルキラー・パールの前日譚だ。
時代を表現した映像の質感がストーリーの不気味さとマッチし、さらに恐怖を与える作品に仕上がっていた。
映画の序盤では、ダンサーになる夢を持ちながら、厳しい母と体の不自由な父親の元で農場暮らしをしていたパールが可哀想に映る。
しかし、徐々に彼女のサイコパスな一面が見えてくる。彼女の中に潜む狂気が徐々に現れてくる様子が、見ていて非常に面白かった。
ホラー映画特有のジャンプスケアの恐怖よりも、パールの本性がいつ表れるのかヒヤヒヤする恐怖を感じた。
終盤のパールがミッツィーにハワードへの気持ちを語る一人語りのシーンでは、パールを演じたミア・ゴスの演技が秀逸だった。
表情から伝わる狂気と、次々に告白される殺人歴を聞くミッツィーの立場を想像するだけでゾッとした。
個人的に気になるのは、出征から家に帰ってきたハワードがあのゾッとする場面を目撃してもなお、パールと一緒にいる心境や、あれだけ文句を言っていたのに帰ってきたハワードを殺すことなく老人になるまで一緒に過ごしたパールの心境である。
また、『X エックス』と『パール』で描かれていない空白の時間で何があったのかが気になった。
映画『X エックス』同様に、テンポ感が良く、飽きずに見続けられる点もこの映画が好きな理由だ。
この作品を見て、なおさらシリーズ3作目の公開が楽しみになった。
シリーズ3作目がアメリカで公開目前↓
まとめ
今回は映画『Pearl パール』をご紹介してきました。
A24初のシリーズ作品である、『X エックス』の続編である今作は、前作に引き続きエロとグロが融合したサイコスリラー作品だった。
前作で謎だった、殺人鬼パールの生い立ちが明かされ、尚更、前作でパールと重ねて描かれたマキシーンを描いた3作目の公開が待ち遠しい。
『MaXXXine』の特報映像↓
映画『X エックス』のあらすじと感想はこちらから↓
最後までご覧いただきありがとうございます!
次回の記事でお会いしましょう!
コメント